2014.03.22 Saturday
佐野眞一「宮本常一のまなざし」
あっちへ手をつけ、こっちへ手をつけ、でも結局読了せずに終わってしまっていた民俗学関連の本だけど、やっと良い入門書に出会いました!
読了後とても印象に残ったのが、宮本常一が15歳で故郷の周防大島を離れるときに父が贈った十か条の言葉。小さい頃から働き詰めで小学校にも
行けなかった父・善十郎の、知識ではなく知恵の持つ輝きが心に沁みます!
2)村でも町でも新しくたずねていったところは必ず高いところへ上って見よ、そして方向を知り、目立つものを見よ。 峠の上で村を見おろすようなこと
があったら、お宮の森やお寺や目につくものをまず見、家のあり方や田畑のあり方を見、周囲の山々を見ておけ、そして山の上で目にひいたものが
あったら、そこへはかならずいって見ることだ。 高いところでよく見ておいたら道にまようようなことはほとんどない。
3)金があったら、その土地の名物や料理は食べておくのがよい。その土地の暮らしの高さがわかるものだ。
4)時間のゆとりがあったら、できるだけ歩いてみることだ。いろいろのことを教えられる。
5)金というものはもうけるのはそんなにむずかしくない。しかし使うのがむずかしい。それだけは忘れぬように。
6)私はおまえを思うように勉強させてやることができない。だからお前には何も注文しない。すきなようにやってくれ。しかし身体は大切にせよ。三十歳まではお前を勘当したつもりでいる。しかし三十すぎたら親のあることを思い出せ。
7)ただし病気になったり、自分で解決のつかないようなことがあったら、郷里へ戻ってこい、親はいつでも待っている。
8)これからさきは子が親に孝行する時代っではない。親が子に孝行する時代だ。そうしないと世の中はよくならぬ。
9)自分でよいと思ったことはやってみよ。それで失敗したからといって、親は責めはしない。
10)人の見のこしたものを見るようにせよ。その中にいつも大事なものがあるはずだ。あせることはない。自分のえらんだ道をしっかり歩いていくことだ。